とらすと通信

とらすと通信2026年10月号「家族の境界と家の間取り」

家族の状態を安定的に保つためには家族外と家族内の境界を「明瞭な境界」(適度な境界)にしておく必要があります。しかし、現代は家族外と家族内の境界があいまいになる傾向があります。SNSなどの発達もありますが、家屋の構造も関係していると思います。

家族内外の境界

家族外と家族内の境界が、あまりに「固い」状態だと、家族外との交流が希薄になり、社会的に機能するのが難しくなります。また子どもの教育という点でも、特に社会性の発達という面で困難が生じやすくなるでしょう。

逆に家族の内外の境界が、あまりに「あいまい」な状態だと、社会的なストレスが家庭内にストレートに入ってくることになり、家庭内を安定に保つことがむずかしくなります。

したがって、家族内外の境界を適度状態(「明瞭」な状態)に保っておくことが非常に重要です。

現代の家の間取り特徴

ここで話が変わりますが、戦後しばらくまでの家の間取りと現代の家の間取りの違いについて考えてみます。いろいろあると思いますが、大きな違いの一つが「客間」の存在です。

戦後しばらくまでの家には多くの場合「客間」がありました。来客があったときに対応するための部屋です。多くの場合、仏壇や床の間なども客間とセットでした。普段はほとんど使われることはありません。来客と言っても、中流のサラリーマン家庭などでは、年に数回くらいで、数十回もあれば結構来客の多い家庭と言えるのではないでしょうか。365日のうち数回~数十回くらいしか使わず、それ以外の時は何にも使われないので、スペースの無駄と言えば無駄です。

対して現在の家屋ではわざわざ客間を設定することはほとんどないようです。理由は、おそらく上記のように、「年に数回しか使わないようなスペースは無駄」という合理的判断なのではないかと思います。筆者は以前高校教諭として勤務していましたが、家庭訪問をするとリビングに通され、家族が普段使っているテーブルなどに座ってお話をするというスタイルがごく普通になっていました。

家の間取りと家族内外の境界

ではなぜ以前は一見無駄な客間が設定されていたのでしょうか。それは、家族内外の境界を維持するためだと考えられます。基本的に家はプライベートな空間であり、家族が気兼ねなくくつろぐための場所であるはずです。しかし、そのスペースに外部から家族外の人間が入ってくるということは、家族外のストレスを招き入れるということになります。直接リビングに客を招くということは、家族外のストレスがダイレクトに家族に影響してくるということを意味します。

それを回避するために設定されていたのが「客間」だと考えられます。つまり、客間は家族内のスペースでもありますが、家族外に開かれたスペースでもあったわけです。来客は客間に入ってもらい、それから先の完全プライベート空間には入れないということで、外部からのストレスを大きく緩和していたわけです。つまり客間の存在によって境界の状態をコントロールしていたと考えられるわけです。

そう考えると、現代の家屋の間取りは、家族内外の境界が「あいまい」になりやすいということが言えます。

現代家屋で境界を調整する工夫

しかし、あまり広い敷地がとれない現在の住宅事情では、わざわざ客間のスペースをとるのは難しいという事情もあるでしょう。その場合は、来客の時だけリビングの一角をパーテーションなどでしきるとか、客用の食器を準備しておいて来客のときだけそれを使うようにする、というような工夫である程度境界の調整が可能だと思います。