とらすと通信

とらすと通信2026年8月号「境界から性教育を考えてみる(3)」

前回は、性教育において伝えるべきこととして次の2つをあげました。

①性(セックス)は境界をやわらかくして親密な人間関係を作る作用があること。

②したがって、特定のパートナー以外との性(セックス)関係はパートナーとの関係を危うくし人間関係を混乱させるリスクがある。

今回は、早期の性(セックス)の体験が何をもたらすか、ということについて考えてみたいと思います。

境界から見る子ども時代の親子関係

境界という概念を使って子どもの時代の人間関係を考えるとどうなるでしょうか。もちろん子どもにとって様々な人間関係の中で、最も境界が柔らかい状態にあるのは親子関係です。親子以外の関係は、親子関係に比べるとかなり固い境界になっています。

つまり、親子は濃密な交流を通じて柔らかい境界で密接な情報のやり取りを行っており、そのことによって親が子を心理的に保護するということが可能な状態になっているわけです。親が子どもをさまざまな外的ストレスか守っている状態であり、それが可能になっている場合子どもが「子ども」でいられるということだと思います。

性(セックス)体験によって生じる変化

では、子どもが早期の性(セックス)体験をすると何が起こるでしょうか?先月説明したとおり、性(セックス)によって、その相手との心理的境界が急激に柔らかくなります。ある意味世界で一番親密な関係になると言っていいのではないでしょうか。

そうなると、それまで親と子どもが柔らかい境界によって子どもを守っていたものが、働かなくなってしまうことになります。世界で一番親密な関係であった親の替わりに性(セックス)関係の相手が親密な関係になってしまうからです。

表現を変えると、それまで親の保護の中で守られ成長してきた子どもがいきなり外の世界に連れ出されるようなものです。卵の中で成育していたヒナが強制的にふ化させられるようなものと言ってもいいでしょう。

このとき、子どもが社会で自立していけるほど成熟していれば問題はありません。しかし、まだ未成熟な段階でこれが起これば、そのあとの成長がかなり難しくなってしまうと考えられます。

では、性(セックス)体験は何歳ごろが適切か、ということですが、それは個々人の成熟度や家庭環境などの条件によって変わってくると思います。一概に何歳ごろということは言えないでしょう。ただ、できるだけ遅い方が親の保護のもとで十分人格の成熟という課題を達成しやすいということははっきり言えると思います。

性教育において伝えるべきこと(2)

性教育において伝えるべきこととして前回は2つ挙げました。今回3つ目として以下のことを挙げたいと思います。

③早期の性(セックス)体験は、人格を未熟な状態で固定化させてしまうリスクがある。経験を焦らずに自分の人格の成熟を促し、社会において自立できる状態になったと判断したときに経験する時期を決めた方がよい。

3回にわたって境界から性教育について考察してきました。そこであげた①~③のことは学校教育でもほとんど触れられていないのではないでしょうか。このことが少しでも性教育の中で反映されることを願います。