とらすと通信

資源とストレスマネジメント

「ストレスマネジメントにおいて、しっかりした行動規範を身につけることが重要」ということを書いてきました。今回はこれを「資源」という概念を使って考察してみたいと思います。

とらすと通信2021年9月号「資源とストレスマネジメント」

資源とストレス

人が持っている資源とは「能力」と「時間」です。このことについては、以前の記事で詳しく書いていますのでぜひそちらもお読みください(2017年12月~2019年4月)。ここでもう一度概要を説明します。

人は自分の持っている 能力と時間=資源 を使って社会的活動を行います。社会的活動とは仕事・家事・育児・その他の社会活動すべてです。

仕事や家事などに取り組むと疲労します。疲労すると能力が低下します。つまり「資源が減少」します。

逆に休息したり、趣味など好きなことに没頭したりすると疲労が回復します。疲労が回復すると能力も回復します。つまり「資源が増加」します。

このように、我々は毎日資源の減少と増加を繰り返しながらバランスを保っていると言えます。

資源とストレスの関係を考えると「資源の低下した状態」=「ストレス状態」と言えます。毎日の生活の積み重ねにおいて、資源の低下が資源の増加を上回ると「慢性的に資源不足の状態」になります。それは「高ストレス状態の持続」です。これが一定期間続くと脳が疲労しさまざまな問題が生じやすくなってきます。

自己資源と援助資源

資源には、「自己資源=自分自身の保有する資源」 と、「援助資源=周囲の人が与えてくれる資源」 の2種類があります。

人は自己資源を使って環境に適応しようとします。資源が高いほど環境に適応しやすくストレスは高くならずにすむということになります。資源が低いと環境適応に困難をきたしやすく、ストレスも高くなりがちです。

しかし、自己資源だけが資源状態を決定するわけではありません。自分を支えてくれる=資源を供給してくれる 人がたくさんいれば、多少自己資源が低くても周りからの資源供給で資源状態を一定に保つことができます。

例えば、入院をしなくてはならない病気になったとします。体力という点で自己資源がかなり低下した状態です。しかし、職場の同僚や家族が自分の不在を積極的にフォローしてくれれば、入院生活を無理せず乗りきることができるでしょう。

行動規範と援助資源

ストレスマネジメントにおいて重要なことは資源状態を高く保つことです。資源状態を高く保つ方法には2つの側面があります。一つには自己資源を高く保つこと、もう一つは援助資源を高く保つことです。

後者の「援助資源を高く保つ」とは、具体的には信頼関係のある人とたくさんつくるということです。前回までの記事で書いたように、信頼関係のある人をたくさんつくるためには自分の行動規範がきちんとしている必要があります。

つまり、自分自身の行動が他者から信頼されるものであれば、周りにたくさんの信頼関係を作ることができます。言い換えれば、自分の周りにたくさんの援助資源をつくることができるということです。

上記は前回までの内容を「資源」という概念を使って説明しなおしただけですが、そうすることで前回までとは少し違う角度で内容をご理解いただけるのではないかと思います。