とらすと通信

「チーム援助とコーディネーション会議」

チーム援助を行う場合,まず問題になるのは「どの生徒に対してチーム援助を行うか」「チームメンバーをどうするか」ということです。この部分を検討するための会議が「コーディネーション会議」です。

とらすと通信 2019年9月号 「チーム援助とコーディネーション会議」

援助の「濃淡」を防ぐために

地域によっては1クラスが10~20名程度の小規模な学校もあります。そういう学校では,すべての先生方がすべての生徒の顔と名前を記憶しており,それぞれの子どもがどのような課題を抱えているかも大まかに把握されています。小規模の学校でチーム援助を行う場合には大きな課題は生じません。
しかし大半の学校は,数百人単位の子どもを抱えています。管理職・学年・教育相談部・保健室・生徒指導部など,各部署で把握している情報には当然ながら「濃淡」が生じます。例えば,学年では,所属している学年の子どものことはある程度把握していても,他の学年のことはあまりよくわからないのが普通です。保健室では,来室の多い子どもの情報はよく把握されますが,あまり来室のない子どものことを把握するのは難しいものです。
校内でチーム援助を効率的に機能させるためには,優先度の高い子どもを中心にチームを編成していく必要があります。しかし,上記の状態でそのままチーム援助を始めると援助の「濃淡」ができやすくなります。それを防止するため方策が「コーディネーション会議」です。

コーディネーション会議の進め方

コーディネーション委員会は,「校内の課題を抱えている子どもの情報をできるだけ広く集約し,どの生徒に対してチーム援助を実施するかを決定する」会議です。
参加者から校内の課題を抱えている子どもの情報を出し合い,援助の優先順位をつけます。それに従ってチーム援助を行うかどうかを検討します。チーム援助を行うことを決定したら,援助チームのメンバーをどうするかを決定します。話し合うのはここまでです。個々のケースに対する具体的対応は「チーム会議」の中で検討してもらいます。
私自身も経験的に,コーディネーション会議が存在しないとチーム援助を効率的に運営することは難しいと感じています。チーム援助とコーディネーション会議は車の両輪のように不可欠な存在だと思います。

既存の「委員会」をコーディネーション会議として活用する

現在学校内には「特別支援教育推進委員会」や「不登校いじめ問題対策委員会」など複数の委員会が組織されています。しかし残念ながら,前回も書いたとおり,「あまり機能していない」という実感を抱いているメンバーが多いのも事実です。原因は,委員会の中で「対応策」まで検討しようとするからではないかと思います。対象となる子どもの数やメンバー構成から考えて有効な対応策を検討するのは難しいと思われます。
しかし,委員会のメンバーは,学校内の情報を総合できるように幅広い分掌から構成されています。したがって既存の委員会をコーディネーター会議として活用することは非常に有用です。既存の組織を活用すれば新しく組織を立ち上げることが不要ですし,何といっても現状の委員会に対する構成メンバーの不満も解消されるでしょう。

コーディネーション会議については,研究者の立場からは石隈利紀先生や栗原慎二先生といった方々が提唱されています。詳細はとらすと通信2019年6月号に参考文献も載せていますので,そちらも参考にされてください。