とらすと通信

「資源調整アプローチ -アセスメント(1)-」

前回から「資源調整アプローチ」の概要を説明しています。最初に行う重要な作業は,「アセスメント」です。

とらすと通信 2019年3月号 「資源調整アプローチ -アセスメント(1)-」

アセスメントは最重要ポイント

これはどのアプローチについても言えることですが,取り組みを始める前にしっかりしたアセスメントを行うことが最も重要です。アセスメントとは,子どもの状況についての情報を集め,対応プランを検討するための材料をそろえることです。したがって,アセスメントの成否がその後の対応の成否を決定するといっても過言ではありません。

より正確なアセスメントを行うために必要なことは,まず,できるだけ多くの情報を集めることです。これには,アンケートや心理検査などの結果も含まれますし,学校における日常生活の観察から得られる情報,担任・カウンセラー・養護教諭などとの面接で得られた情報,保護者から得られた情報など,多様な側面からの情報が必要です。人は,それぞれの場面で見せる行動や態度が異なっていますし,それだけ多面的な存在だからです。したがって,子どもに関わっている人が集まって,情報を出し合い,集約することが必要です。

そのためにも,関係者が集まって特定の子どもの支援について話し合う「支援会議(援助会議)」を開くことは非常に効果的です。

「本人の状態」についてのアセスメント

アセスメントには,「本人の状態についてのアセスメント」と「資源の状態についてのアセスメント」の2種類があります。また,資源の状態についてのアセスメントには「自己資源の状態についてのアセスメント」と「援助資源の状態についてのアセスメント」の2種類があります。

この中で,まず重要なのは「本人の状態についてのアセスメント」です。例えば,不登校という様態に限っても「登校もできない」「登校は可能だが,教室には入れない」「一部の授業のときだけ教室に入れる」「教室には入れる日もあるが,他の子どもとの交流は難しい」など様々な状態があります。特に,心理面・体調面・行動面において,一定以上不安定な様子が見られる場合には,医療支援につなげることが必要ですし,そういう状態の子どもに対しては,学校現場での対応も慎重にする必要があります。学校側が善意で熱心に子どもの話を聞いたりすることが,かえって状態を悪化させることもあるからです。特に,精神疾患の可能性がある場合には慎重な対応が求められます。

残念ながら,教師は教育の専門家ではあっても,心理や医療の専門家ではありません。これまで,熱意をもって子どもの対応にあたり,それが裏目に出て子どもの状態を悪化させてしまうという事例をたくさん見てきました。これは,取り組みを行った教師にとっても不幸なことです。

そのため,アセスメントには,多面的な専門性からのアプローチが必要です。支援会議を開く場合には,できれば教育の専門家である教師だけではなく,スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなど,心理や福祉の専門家も入る形で実施することが望ましいと思います。

相互コンサルテーション

このようなスタンスで支援会議を行うために非常に有効な考え方として「相互コンサルテーション」(石隈,2003年)があります。コンサルテーションとは,専門家がその他の方ににアドバイスを行うことです。アドバイスを行う専門家を「コンサルタント」,アドバイスを受ける側を「コンサルティ」と呼びます。

例えば学校では,教師は教育の専門家であり,親はその子ども個人の成育歴などについての専門家であり,カウンセラーは心理の専門家とみなすことができます。教師が学級での様子を説明し,見立てを述べるときには,教師がコンサルタントであり,カウンセラーはコンサルティになります。カウンセラーがその見立てから学級での対応について意見を伝えるときには,カウンセラーがコンサルタントになり,教師がコンサルティになります。また,保護者が子どものこれまでの生い立ちや子どもの特徴などについて語り,どういう対応がうまくいったかという意見を伝えるときには,保護者がコンサルタントであり,教師やカウンセラーはコンサルティになります。

この発想は支援会議を機能させる非常に有効な考え方だと思います。ぜひ応用していただけたらと思います。

 

参考文献:「石隈・田村式援助シートによるチーム援助入門 学校心理学・実践編」石隈利紀・田村節子著,図書文化,2003年)