「資源」は増加したり減少したりするという特性があります。資源が不足することで様々な問題が生じます。資源不足を解消するカギの一つが「良好な人間関係」です。
とらすと通信 2018年6月号 「資源の増減-良好な人間関係が資源増加のカギ-」
仕事や家事をすると疲れます。つまり体力という資源を消耗します。休息をしたり睡眠をとったりすれば体力という資源が回復します。このように,資源は増減するという特性があります。
私たちは,疲れたら一定の休息や睡眠をとることで資源のバランスをとっています。しかし,仕事が極度に忙しく,睡眠時間を削り,休日もなく働く状態になると資源の増加より減少の方が上回ることになってしまいます。このように資源不足の状態が続いた場合,その人はしだいに体調を崩し,気持ちが落ち込み,やる気が起きなくなるなどの社会的な障害が生じてきます。したがって,資源の増加と減少のバランスをとり,資源不足に陥らないように生活するかが非常に重要になります。
資源のバランスをとるためには,まずどのような事柄が資源を増加させ,どのような事柄が資源を減少させるかを明確に把握しておく必要があります。
資源の増加と減少
資源を減少させる例として次の事柄をあげることができます。
労働(仕事や家事),育児・子育て,経済消費(財の減少),不健康な生活習慣(体力の低下→結果としての病気),良好でない人間関係,怒り・憎しみなどの感情,悪口や嘘などの行動,など。
逆に,資源を増加させる例としては次の事柄をあげることができます。
睡眠・休息,余暇・趣味,経済収入(財の増加),健康な生活習慣(体力の向上),スキルの向上,良好な人間関係,思いやり・祈り,社会貢献・ボランティア,など。
少し説明が必要だと思いますが,「スキルの向上」「怒り・憎しみなどの感情」「悪口や嘘などの行動」,「思いやり・祈り」「社会貢献・ボランティア」などについては,次回以降に詳しく説明させていただきます。
良好な人間関係が資源を拡大するカギ
資源のバランスをとるポイントの一つとなるのは,「良好な人間関係は資源を増加させ,良好でない人間関係が資源を減少させる」ということです。
人は社会的動物であり,会社や家族など,常に何かの組織に属して生活しています。個々人の持っている資源(能力・時間)はもともと限界があります。しかしながら,個々人の持っている資源がそれほど多くなくても,お互いの関係が良好であれば,個々の持っている資源を組織全体としては拡大できるということです。
チームプレイのスポーツなどではその例をよく見ることができます。個々の選手の能力はそこそこでも,チームとしての完成度が高い場合びっくりするような成績をおさめることがあります。逆に,個々の選手の能力が高くても,チームとしての完成度が低ければ高い成績をおさめることは難しいものです。
つまり,組織内においては,お互いの関係の状態によって,個々人の持つ資源より以上の資源を生み出すこともできれば,個々人の持つ資源を逆に浪費させてしまうこともあるということです。
家族や学級においても同じことが言えます。
家庭内においては,一旦ぎすぎすした関係に陥ると資源を回復させるはずの家庭が,ただでさえ少ない資源を浪費させる場になってしまいます。お互いに少しずつの優しい言葉かけや行動が資源を増加させます。
学級においては,資源の不足した状態で子ども集まってきています。関係が悪化すると,お互いに資源を浪費しあう関係になってしまいます。そうなるといじめなどの問題が発生しやすくなっていきます。しかし,学級運営の工夫によって子どもどうしの関係が良好になることに成功すれば,資源増加が可能になります。お互いがお互いを支えあう関係となるわけです。このことは,不登校やいじめの予防的対応として非常に大きなポイントになると思います。
さまざまな要因から,現代は非常に資源が不足しがちな傾向にあります。その中で,少ない資源を持ち寄って何とかバランスをとる工夫の一つとして「良好な人間関係の構築・維持」がそのカギの一つとなると思います。