援助資源マップは、子どもの自己資源と援助資源の状態を図式化したものです。今回は子どもの自己資源の状態について検討してみたいと思います。
とらすと通信2021年11月号「援助資源マップー子どもの自己資源(1)」
子どもの自己資源の要素
子どもの自己資源は、現在時点での子どもの能力と言ってよいでしょう。その要素としては、「防衛体力」「発達障害の有無」「成育歴」「趣味特技」などがあります。今回はその概説をしたいと思います。
防衛体力
以前の記事でも説明したと思いますが、体力には「運動体力」と「防衛体力」があります。運動体力はスポーツをする能力のことです。防衛体力は健康を維持する体力です。防衛体力が低いとストレスにも弱くなります。ストレス対処というと心理的な面ばかりが注目されがちですが、実はストレス対処の背景にはこの防衛体力が大きくかかわっています。
発達障害の有無
教育に携わっておられる方であればご存じと思いますが、学習障害・注意欠陥多動性障害・自閉症スペクトラム障害などが発達障害の代表的なものです。これらの障害があると、環境適応に苦戦することになります。例えば、「書字障害」という学習障害がある場合、文章は読めるのに文字を書くのが困難な状態になります。学年が上がるにしたがって、日常の授業展開についていくことが非常に大きな負担になってきます。つまり自己資源がその部分について低くなるということです。
成育歴
発達障害がなくても成育過程で子どもの健全発達を阻害するような環境が長く続いた場合などは情緒的に不安定になったり、認知パターンの歪みが大きくなったりします。
例えば、虐待を受けていたりすると、いわゆる「愛着障害」という状態になり、不安が強くストレス耐性も低くなります。
また、常に「競争に勝つ」ということを求められるような環境で育てば、「競争に勝つことが善である。負ければ自分は世界か受け入れられない」という信念(ビリーフ)が形成されやすくなります。これは認知パターンの歪みと言ってよいと思います。そういう信念を持っている人は潜在的に不安が強くなります。いくら努力をしても必ず競争に勝てるとは限らないからです。この場合もストレス耐性が低くなります。
このように、どのような環境で成長してきたかということが、本人の現在のストレス耐性に強く影響します。つまり自己資源の状態を決めるということです。
趣味特技
これは主に本人の持っている資源の高さになります。趣味=好きなことに熱中する時間があればストレスのバランスを取りやすくなります。特技があれば、それは本人の自信につながります。つまり趣味や特技はプラスの資源として機能するということです。
子どもの自己資源には以上のような要素があります。したがって、子どもの自己資源のアセスメント(分析)をするには、上記の要素に関係する情報をできるだけ詳細に集める必要があります。