とらすと通信

自己資源と援助資源

前回自己資源と援助資源について説明しました。今回はそのことについてもう少し考察してみたいと思います。

とらすと通信2021年10月号「自己資源と援助資源」

自己資源と援助資源

人は自分の持っている資源(自己資源=能力+時間)で環境に適応しようとします。資源に余裕があれば無理なく生活できます。環境適応の過程で資源が足りなければ高ストレス状態になり、それが続くと不適応状態に陥ることもあます。
例えば、長時間労働が続くと、主に時間や体力という資源の消費が激しくなります。また、労働時間があまり長くなくても自分の能力ギリギリかそれを超えるようなことが要求されるような仕事が続けばやはり資源の消費が激しくなります。例えば多量のクレーム処理を任され過度な緊張が続く仕事などがその例になると思います。
しかし、自己資源が不足していても、それを補ってくれるような援助資源が働けば不適応状態に陥ることを防ぐこともできます。例えば、長時間労働が続く職場であっても、配偶者が専業主婦/主夫で家事労働はすべて引き受けてくれるとか、祖父母の支援があって家事や子育ての一部を担ってくれるなどの状態であれば不適応に陥らずに仕事を続けることができるかもしれません。
つまり「自分のストレス状態」は、自己資源と援助資源のバランスによって決まるということです。

資源のプラス部分とマイナス部分

このように援助資源は自分を支えてくれる要素なのですが、支えてくれるというプラスの部分だけではなく、マイナスの部分も存在します。例えば、職場である同僚とトラブルになったとします。毎日顔を合わせる相手だとすると、仕事に行くだけで緊張を強いられることになります。そのストレスは資源を浪費させることになります。家族においても、例えば夫婦関係が良好であればそれは自分を支える強力な資源になりますが、関係が悪化していると逆に大きな資源浪費の要素になります。

ストレスマネジメントと資源

以上のことを踏まえて自己資源・援助資源からストレスマネジメントを次のように展開できます。
まず、自己資源と援助資源の状態を分析します。それぞれにプラスの部分とマイナスの部分があるはずです。
そこで、各資源の要素についてプラスの部分はそれが維持・強化できるように工夫します。例えば、夫婦関係が良好であるならばそれが維持できるように今までの取り組みを続ければよいでしょう。それはお互いに「ありがとう」という感謝の言葉を伝えることかもしれませんし、誕生日などの記念日を大事にすることなどかもしれません。
そして、マイナスの部分はプラスに転換できる方策を考えます。同僚との関係がうまくいっていなければ、どうすれば改善できるかを考えます。仕事の効率が問題になっていれば、どうすれば効率を上げることができるかを考えます。
このように自己資源と援助資源、それぞれの資源状態を細かく分析し、一つ一つ改善・維持・強化の方策を考えることで自己のストレス状態を改善することが可能になります。

援助資源マップ

以上のことを子どもの立場で図式化したものが、本法人が作成している「援助資源マップ」というものです。研修会ではこの援助資源マップを使った援助の方法について説明をしています。次回以降は「援助資源マップ」を使った子どもの援助方法を考察していきたいと思います。