学校ですぐに使える非常に実践的な認知行動療法の本を紹介します。
とらすと通信 2020年12月号【書籍紹介】「教室で気になる子への認知行動療法」(松浦直己著)
認知行動療法
認知行動療法は特にうつ病の治療などへの効果についてエビデンスの得られている心理療法として病院などで実践されているものです。
児童生徒の中には「いつも自分ばかりが注意される」とか「95点とっても100点でないと意味がない」など,極端な発想によって自分を苦しめてしまう傾向のお子さんがいます。特に発達障害のあるお子さんにはよく見られます。認知行動療法ではそういう極端な発想を「認知の歪み」と表現します。認知の歪みによって物事を理解すると,怒りや悲しみなどネガティブな感情にとらえられます。そしてその感情によって行動するために周りとのトラブルも起こりがちになります。したがって,認知の歪みを修正することがこの場合のポイントになります。
先生方が使える認知行動療法
認知行動療法は認知の歪みの修正の具体的な方法を体系化した心理療法です。しかしながら,今まで出版されていたものは主に医療分野で使われている方法論を説明したものでした。医療分野の方法論をそのまま教育分野で使おうとするとどうしても齟齬が生じます。今回紹介している本では,先生方が認知行動療法をすぐに実践できるように学校現場の実態にあわせて体系化されています。そういう意味で画期的な本だと思います。
本の中にも書いてありますが,認知行動療法はお互いの話し合いによって認知の歪みの修正を試みるものです。そういう意味で,他のカウンセリングや心理療法の方法に比べると極めて「教育的」な方法です。
実は,先生方は日常的に認知行動療法に取り組んでいると言えます。例えば「こういう風に考えてみたらもっと楽になると思うよ」とか「○○君が言いたかったことは実はこういうことだと思うけよ」などの言葉かけは,子どもの認知を修正することで子どもがより生きやすくするための試みです。認知行動療法はそれをより体系化して使いやすくしたものと言えます。そういう意味で,認知行動療法は学校という場に非常になじみやすい方法だと考えます。
イラストを使ってとても分かりやすく書かれています。事例は主に小学生対象ですが,中学生,高校生でも同じく使えると思います。興味を持たれた方はぜひご一読ください。
「教室でできる気になる子への認知行動療法 『認知の歪み』から起こる行動を変える13の技法」松浦直己著,中央法規出版,2018年。
「教室でできる気になる子への認知行動療法 実践ワーク編」松浦直己著,中央法規出版,2020年。
今後も学校現場で役立つ書籍の情報などがありましたらご紹介していきたいと思います。