熊本県においても5月いっぱいの休校延長が決定しました。家の中で友達とも会えず,限られた刺激しか得られない状況でストレスや不安を高めている子どもも多いと思います。学校・大人として今何を考えるべきでしょうか。
とらすと通信 2020年5号「ステイホームにおいて,今子どもたちのためにできること」
休校が長引くにつれて,オンライン教育への取り組みが活発化しているようです。家にWi-Fi環境がない,タブレットやパソコンがない,という家庭もあり,教育サービス提供の格差解消に留意しつつ政策・教育委員会・学校・個々の教師のレベルで模索が続けられ,取り組みが始まっています。まずはその努力に敬意を表したいと思います。
オンライン教育に取り組む中で考慮に入れておきたい視点が一つあります。それは,「人とのコミュニケーションが最も強力な心理的支えになりうる」ということです。
熊本地震での体験
熊本地震のさい,筆者(豊永)は,震源に最も近い高校の一つに勤務していました。当時教育相談の責任者という立場でしたので,子どもたちの心のケアのプログラム策定に当たりました。そのプログラムの一つは「グループセッションによるストレス低減プログラム」です。内容はごく簡単なもので,「4~6人程度のグループをつくり,あるテーマについて交代で話をする。話す人以外はしっかり聴く。」というものです。テーマは最近あった「楽しいこと」「面白かったこと」「取り組んでいること」など,地震とは直接関係のないものを選んで提示しました。
5月の連休後に学校が再開しました。健康観察や被害状況確認など,やらなくてはならないことの合間にこのプログラムを実施してもらいました。最初の数日は1日1回,その後は間隔をあけて週1くらいで実施してもらいました。
非常に印象的だったのは,健康観察の意味も含めてストレスチェック用のアンケートも実施していたのですが,その平均値が登校初日はかなり高い数値だったのに,その後数日で急激に低下したことです。
人とのコミュニケーションが最も強力な心理的支えになる
プログラム自体はごくごく簡単なものです。もちろん,学校に戻れたこと自体や親しい友達と再会できたことから来る安心感もあったと思います。それらも含めて,人とのコミュニケーションが最も強力な心理的支えになることを強く実感した出来事でした。
自由に外出もできない現在の状況下でオンライン教育に取り組む上で考慮に入れていただきたいことの一つは,子どもどうしのコミュニケーションも取れるようにすることです。具体的には,「オンライン会議システムを使ってホームルームなどをする場合,一日ごとに数人ずつ,いろんなテーマについて数分間みんなに話しをしてもらう時間をとる。」などが考えられます。テーマは,「家で退屈しないためにやっている工夫」とか「生活リズムを崩さないための工夫」とか「最近あった笑える出来事」など,何でもいいと思います。テーマは自由でもいいですが,それだと話すのが難しいと思う子どももいると思うので,いくつかのテーマを提示して選んでもらうのもよいかと思います。6個のテーマを作っておいて,先生がさいころを振って出た目のテーマについて話してもらうなど,遊びの要素を取り入れるのもよいかもしれません。
行動が制限されるという状況は予想より強いストレスになりうる状況ですし,大人より子どもの方がその傾向は強いと思われます。オンライン教育に取り組まれる中で上記のような視点も加えて取り組んでいただけることで子どもの心の負担を軽くすることができると思います。