数回にわけて「資源調整アプローチ」におけるアセスメントのポイントを説明しています。今回は子どもを取り巻く援助資源のうち,家族が保有する資源について考えてみます。
とらすと通信 2019年5月号 「資源調整アプローチ -アセスメント(3)家族の資源-」
家族の資源
子どもに限らず,人を支えている資源の中で最も強く重要な機能を果たしているのは家族です。特に親子関係は生涯にわたってお互いを支え続ける関係にあります。学校やカウンセラーなどが基本的に期間限定のサポートしか行えないのに比べると大きな違いです。それは,血縁という遺伝的なつながりを基盤としていることに加え,生まれたあと授乳やスキンシップに始まり,一つ屋根の下で一緒に寝起きをし,同じ食卓で食事をするという,他の関係に見られない濃密な関係の蓄積によって家族の絆が形成されているからです。したがって,家族関係における資源のバランスを知ることは,家族外の援助者にとっても非常に重要です。
家族の資源を分析する視点
家族を資源としてとらえ,そのバランスを理解するために必要な視点をいくつか提示しておきたいと思います。
家族構成・・・ふたり親か,一人親か。一人親の場合,母子家庭か父子家庭か。一人親の場合はふたり親に比べると,単純に考えて資源が半分ということになります。また,父親と母親とでは,その機能の違いにより子どもの発達に与える影響が異なると考えられます。現代は家族形態が多様化する傾向にありますが,それが「良い・悪い」という価値判断ではなく,保有する資源の量や質という視点から家族構成を見ることが必要です。一人親家庭の場合にはやはりどうしても資源が不足しがちになりますから,福祉サービスや親族などの,家庭外からの資源導入も検討する必要があります。
家族関係・・・家族構成員どうしの関係は当然大きな影響があります。この部分について理解するのには家族療法やシステムズアプローチの視点が参考になります。
経済状況・・・経済状況も非常に大きなポイントです。例えば主な経済収入である父親の失業によって,子どもが不登校に陥るというケースは珍しくありません。経済状況と子どもの登校とは一見関係なさそうですが,経済的な危機は家族の命にかかわる事柄であり,これが安定しなければ親は子どもを支える余裕などなくなってしまうからです。この場合でも,場合によっては公的支援なども検討する必要があります。
親以外の援助資源
祖父母,おじやおばといった関係の人で,子どもやその家庭の援助資源となりうる人がどれくらいいるかも知っておくことは有益です。例えば,父子家庭の場合,祖母が実質的に母親の機能を代替していることがよくあります。また,親子関係が非常にこじれているような場合,おじやおばが,直系ではないけれど,「ななめ」の関係として一時的に子どもの援助に入ってもらったり,親子の関係修復の仲立ちをしてもらったりなどのことができることがあります。
学校としてできる援助
学校として家族内のことに一定以上立ち入ることは非常に難しい部分があります。学校は子どもの教育をする機関であり,家族の援助を行う機関ではないからです。したがって,SSW(スクールソーシャルワーカー)などの専門職と連携して間接的に家族援助を行い,結果として子どもの援助につなげるのが動きやすい形態だと思います。SSWの配置はだんだん進んできていますが,まだまだ絶対数が足りない状態です。今後配置の充実が望まれるところです。
家族の資源バランスを理解するには,上記のうち家族関係の分析が非常に重要です。このことについては,機会があれば別の回でご説明したいと思います。