前回から「資源調整アプローチ」におけるアセスメントのポイントを説明しています。今回は子どもの自己資源のアセスメントについて考えてみます。
とらすと通信 2019年4月号 「資源調整アプローチ -アセスメント(2)-」
自己資源とは
「自己資源」とは,対象となる人自身が保有している時間と能力です。これに対し「援助資源」とは対象となる人に対して援助資源となりうる人や環境を指します。
自己資源を規定する要因には,遺伝的要因などの生得的な要因と,生後の環境要因などの習得的な要因の2種類があります。
生得的要因
免疫体力や運動体力などの身体能力は生得的要因が規定している部分がかなりあると思われます。免疫体力は,生後に経験した大きな病気やケガなどの習得的要因も影響しますが,私の臨床経験からは,一旦低下するとその後の人生を通じて大きく変動はしない傾向があると感じています。したがって,これは生得的要因と同じ扱いで考えた方が臨床的には対処しやすいかもしれません。以前にも説明しましたが,特に免疫体力はストレス対処能力に大きく影響しますので,アセスメントは重要です。したがって,ケガや病気の履歴は必ずチェックするべきです。
身体的ハンディキャップや発達障害などは,環境適応の困難を抱えやすくする要因となります。つまり特定の能力が低下している状態です。したがって,「苦手さ」の種類がどのようなものかをできるだけ詳しく調べる必要があります。発達障害に関しては,専門機関で実施される発達検査の結果が参考になりますので,検査結果がある場合にはできるだけチェックすることをお勧めします。
習得的要因
発達障害ではなかったとしても,成育過程において十分なケアがなされなかったり,強い抑圧を受けていたり,十分な教育的環境が与えられなかったりした場合には,一部の能力の発達が阻害されている場合があります。本人の成育歴・教育歴がどのようなものだったかについては,本人,保護者から情報を得ることが重要ですし,以前通っていた保育園・幼稚園,小学校,中学校などからも情報を得ることは非常に有益です。
プラスの資源
自己資源のアセスメントを行う場合には,上記のようにどうしてもいわば「マイナス」の資源に目がいきがちです。支援者としては,その部分を何とかサポートしようと考えるからです。しかし,「資源」とはもともと「プラス」の概念です。体力が強ければ,それは強力な資源となります。発達障害の場合には特定の能力が非常に高いことがよく見られます。高い記憶力,細部を細かく認識する能力,特定の事柄に対する高い集中力,・・・などなどです。それらの能力を活かせる環境を用意することができれば,そのこと自体が本人を支える要因となります。
成育歴上の強みも同様です。また,特技や趣味などがあればそれもプラスの資源と考えることができます。学習への取り組みが今一つでも,特定のスポーツには熱中できる子どももいます。同じく,特定の趣味に熱中できる子どももいます。そういう場合には,本人が熱中できる時間や空間をちゃんと保障してあげることができれば,それが本人を支える要因となります。とにかく推理小説を読むことが大好きな子どもが,そのことを支えとして学校での孤立したつらい生活を乗り切ることができるという場合もあるのです。
自己資源のアセスメントを元にした支援
自己資源のアセスメントが詳細に行われれば,資源の不足部分に対しては援助資源を投入し,資源の高い部分に対しては,それを生かす環境設定を考えることが可能になります。したがって次の段階が援助資源のアセスメントということになります。次回以降そのことについて考えていきたいと思います。